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一ツ瀬ダム 釣行記
                             著者 (朝太郎)
長年の夢であった 一ツ瀬ダム に往こう。
思い立ったのは1ヶ月ほど前です。

定年前研修の特別休暇14日間が取れる。体調もなんとかコントロール出来ている。
時期は 6月の後半の梅雨最盛期でないと往く意味がない。
ここの所の折り合いを 会社と付けるのが 難航した。
何も月末のしかもキャンペーン月に 責任者不在では どうしょうもない。
あれこれ 言われたが此方は一生に一度の事、しかも 今なら 体調がいけそうだ。
ハードな釣行もなんとかなる。これから先はわからない。




6月18日(火)
高槻の自宅を16.30分 出発
ワゴン車の中は ボート 船外機 食料 着替え 釣り道具 一万円分の餌 薬色々 双眼鏡 将棋盤 本10冊 仮眠用布団 ザウルス 携帯電話 長靴 非常用飲料水 登山靴 ロープ 等が 詰め込まれている。
これだけ有れば 家出 も出来るょ。

途中 渋滞に巻き込まれながらも 大阪南港より無事 マリンエキスプレス 宮崎行き19.00発に乗船。
美々津丸9.500トンであるが 本年12月に さらに大きい豪華船が就航する。
来年からは 新しい豪華船で往けるょ。
費用は 5メートル未満 往復運賃45.450円 運転者1名の2等運賃含む。

出発して 10分 デッキをウロウロしていると もじりさんより激励の 電話が 携帯に入る。
頑張ってきます と明るく答える。
ありがとう もじりさん。

外洋にでると 低気圧の接近で 結構船が揺れる。
船内で食べた1.300円の 堅いサーロィンステーキが胸に支えて気分が悪い。
なんで そんもの食うのって。 それしか なかったのだ。
余り眠れそうでないので 眠剤を飲んで 大型ドライバー専用のベットに そっと潜り込む。
腰痛と 左足のふくらはぎ筋肉が痙攣をおこして 痛い。
うーん。それでも2時間ほど うとうと と眠る。




6月19日(水)
朝 9.00に宮崎港に到着 10分の遅れである。
良く晴れている。空気が澄んで いる。
遠くに一ツ瀬ダムのある市房山系が霞んで見える。ヤッタゼ!おっちやん。

ゆっくりと スロープを降りつつ カワセミさんを探す。
すぐ其処にカワセミさんは 立たれていた。

こんにちわ 朝太郎です。
有り難いことにカワセミさんは お仕事の 時間を割いて 出迎えてくれたのです。
大柄な目の大きいシャイで礼儀正しい方です。
「このまま 一ツ瀬ダム へ直行されますか」

「途中 尺もの100枚は釣れる 一ツ瀬川の堰も 有りますが」
ええっ100枚 尺もの うーん。そこに立ち寄ってから 一ツ瀬ダムへ往こう。

途中 喫茶店により 自己紹介をすませる。
カワセミさんより 観光案内 地元の地図 niftyのffishのプリントアウト等戴く。
何から何まで 有り難いことです。
Joe`sさんもひょつとすると 来られるかも知れません。3割の確率ですが。
それを 聞いて 大変嬉しくなる。

私 空港までお迎えに行く とお伝え下さい。
と伝言をお願いする。




尺もの 100枚の所 は西都市の妻というところで一ツ瀬川に堰の有るところ です。
堰があるので 岸辺付近はワンドのようになり 流れがつきません。

此処で ご案内していただいて カワセミさんと 別れました。
有り難うカワセミさん。

誰も 釣り人が居なかったので 入るポイントを間違ったようです。
葦際の 沈船横で竿を出したのですが 当たりがありません。
本当は50メートルほど下流の 広々したところで12尺でタナ1本で 尺ものの宙づりが出来るらしいのです。
それでも 広々とした 一ツ瀬川の澄んだ水の中で竿を出せたことは 満足です。

13.00頃 其処を切り上げ 途中 昼食を取り ゆっくりと一ツ瀬ダムへ 向かう。
宮崎港から一ツ瀬ダムまでは 約70キロ 2時間で行けます。
国道219号線一 です。道は全面舗装で走りやすい。

一ツ瀬ダム ダムサイト に到着したのは15.00頃でした。
懐かし い 資料館の横に車を止めて 湖面を見つめます。
減水だなあ。7メートル 位か。
とうとう来たなぁ 一ツ瀬へと 車を降り 大きな堰堤を見上げる。

この一ツ瀬ダムは 昭和38年に4年の歳月と250億円の工事費を掛けて 完成した 九電の誇る 西日本最大のダムです。




湖底には 360戸の家々 5つの学校が沈んでいます。
源流は 市房山系1.722メートルで 宮崎県と熊本県の県境 九州中央山岳 地帯の主峰より注いでいます。

米良川本流 小川川 銀鏡川の清流を留めた山また山の秘境に 大きなへら鮒 が生息しています。

昭和54年に51.4センチ が釣れ その後 数多くの50上が釣れている。
現認最大は 54センチと言われているが それ以上の大物がいるのは確実です。

米良大橋に到着 すぐに左折し銀鏡川上流を目指す。
以前より道が狭くカーブ゛ も多い感じである。
かなり上流の所で 北九州ナンバーが止まっている。

へら鮒釣の人である。

車中で休憩されているので 話しかける。

45センチ以下3枚で スレが多く餌を追わないと 嘆いている。
ええっ。スレが多いって 何それ ハタイテるの ?
ああ ハタイとるょ。上からでも見えるよ。

成る程 道路からはるか下を覗くと谷川のように幅の狭い流れの速い 銀鏡川のヘチを黒い魚影が登っている。
慌てて 吊り橋の所を見に行くが ここは 清流の渓谷で此処までは登って いない。

これは いける。日にちは充分ある。

よし 今日は時間も時間だし 竿出しはしないでポイント探しのつもりになる。




月曜日に100ミリの雨が降り 一挙に3メートル増水し 火曜日から ハタキらしたらしい。 到着するまで 減水で時間待ちと思っていたので これは 全く意外な事で 行動が 空回りしたしまった。

通常なら 此処で1時間でも 竿出しすべき所である。
日曜日には 宮崎へら研の例会があり 減水のため 全員坊主だったのだ。

カワセミさんから 聞いていた越野大橋のふもとの学校グランド跡を見に行く 校門の柱が二本立っている。
カワセミさんが小学校1年生迄 楽しく遊んだ 所だ。

ここも 増水し 草が冠水している。
校門の主柱の先端部分のみ出ている。
二人のへら釣りの人が 入っている。

43センチを頭に3枚の釣果だそうである。

午前中の方が 良く ハテイて いたそうである。
此処は 降りるのに階段が付いている。ボートも下ろせる。

米良稲荷橋を渡る この辺りまで来ると 水色が 茶色く粘土色している。
中にいる魚は 土を吸って大変 と言うほど濁っている。

しかし 何か 様子がおかしい。水面が騒がしい。
大きなワンドで車を止める。

 なんと! どろどろの赤土の様な湖面全体に 40−45センチのへら鮒が 何十匹 何百かなぁ 驚くほどの数である。
体高の有る大きい白い腹を見せて産卵の真っ最中である。




その水音がやかましい位である。

下に降りていくと 手が届きそうな所で 巨べらが反転する。
暫く 座り込んで その 迫力を楽しむ。

横野大橋に到着 下流右手の岩盤前に一人入っている。
横野大橋下の本流は 急流である。大きな音とをたてて水が流れ込んでいる。
ここより 上流のらくだこぶワンドを見に行く。ここも未だ谷川状の清流で ある。
此処までは 未だ登っていないようだ。

18.00にフジヤに到着。

大阪の夫婦連れの方が 48センチが釣れたと 大声を出している。

もう フジヤ は満室とのこと 早くも相当の巨べら師が来ている。

暫くすると 凧さんから 茶畑で48.2センチを上げました と電話を 戴く。

「朝太郎さんは 何処には入ったの」
「今日は竿出ししなかたんです」
「あれ 今日が良かったんですょ」「ううう。」

カワセミさんからも 凧さんの情報を電話で戴く。
皆さん有り難う。
明日に期待して 眠剤 を飲んで 早々に寝る。

後で わかったことだが この日 銀鏡川上流で50.5センチ。
横尾大橋下流岩盤前で 51.5センチと2匹の50上が出ていた。




6月20日(木)
早朝 バタバタという物音で 目が覚める。

4.30分 玄関に朝食 昼食のおにぎりが置いて有る。残りが少ない。
もう既に 他の連中は行動を開始している。

今日は 10年前 良い思いをした銀鏡川上流に入ることに決めている。

横尾大橋に到着。雨は昨夜から降り続いている。
本流の流れは 水嵩ましてを 大変な勢いで本湖に流れ込んでいる。
銀鏡川上流はここから30キロはある。カーブの多い道を慎重に運転する。

現場に着いた。水は昨夜一挙に5メートルぐらい増水している。

昨日 谷川だったのが すでにもう大きな湖になっている。
崖下に茂っている 草木が 冠水している。そこに巨べらが走り回っている。

銀鏡川上流は 本湖と違い水は大変澄んでいる。

その分 名物の大きな塵の群が 風向きにより 行ったり来たりしている。
大きな流木も浮いている。

急な崖を滑りながら降りる。

確か 10年前もこの辺に入ったなぁ。もっと満水 だったので ボートも下ろせたのだろう。

帰巣本能のようなものがあるのだろうか 同じ所に入る。




雨の中 急勾配の所に 釣台を据える。

11尺のカッツケ夢幻で床を取る。
むむむ。2本はある。
少し深いんじゃないの。
しかし 足下の草むらには バチャ バチャと巨べらが突っ込んでいる。

餌を作る。 本当にダムの餌を作るのは 何年ぶりであろう。
実に8年ぶりだ。 その間 釣りはしたくてもできなかった。

しかし今はこうして夢にまで見た一ツ瀬ダムで巨べらを目の前にしている。
すでに57才、 へら鮒釣りを初めて30年、不治の病をかかえ、 へら鮒釣り だけを楽しみに、生きてきた、その男の執念が一人で雨の中誰も居ない 山また山の 銀鏡川上流で 竿を出させている。

一ツ瀬ダムょ。俺は帰ってきたょ。

尺上て餌はいつ出来たのだろう、 以外と粘りがあるなぁ。
浅ダナ1本を少し混ぜ みる。
そうだ 当時は 1対1粉末マッシュにフラッシュというのを混ぜたなあ。

当時は 斉藤釣具店 なんて名前でケース単位でマルキュウから直送だったなあ。

浮木は 岐阜の巨べら師 慶ちゃん作。
四国の永瀬ダムで50上を釣った慶ちゃんはどうしているのだろう。

先日 釣り具のナニワに行くと 慶ちゃんの浮木が沢山 おいてあったがーーー。
やはり ここは 慶ちゃんの浮木だ。

山口のお爺さんはどうしているのだろう。




ひよっとすると この辺りに居るのでは、 ヘラバックを背負って 10年前に 家出してしまつた釣友を思い出す。

爺さん 爺さんと呼んでいたが 丁度今の俺と同じ57才だったのか。

人生 良い時は 短いょ。

以外に あたり は遠かった。
なんとかして 寄せようとしても寄らない。
足を止めようとして止まらない。
行き交う巨べらは 餌 を追わない。

それでも 午前中 スパッとした大きなあたりで41.5と41.0が上がる。

雨が激しく降る。
水嵩が少しづづ 増えてきている。
増水が続いているのだ。

身体が冷えてきた。
痛めた左足をひきづりながら 急勾配を登り 車へ逃げ込む。

いつの間にか 宮崎ナンバー が前方に止まっている。

その下を覗くと 急な崖下に釣り人が一人入っている。石を落とさないように 慎重に降りて 行く。
地元の宮崎へら研の釣り人だ。

「昨日 此処で50.5センチを釣りました。」




「今日は 6枚です」浮木は良く動いている。目の前で40上を上げられる。

此処のポイントは 吊り橋のすぐ下流の道路側である。
道路が大きく迂回し その奥から 清流が流れ込んでいる。
丁度 小さなわんど状になっており 左右は 岩盤が切り立っている。

登ってきた巨べらが いったん 此処で足を止めるという 雰囲気がある。

「この辺りの 良いポイントは 何処ですか」と素直に聞く。

「此処と 対岸の吊り橋を渡った下手の流れ込み。

秋は上手の竹藪前。
吊り橋より200メートル上流道路側の台地状の草原の所。」

上流の草原の所は パラソルが 二つ 見える。
この辺りで今日は私をの入れて 合計4人の釣り人である。

再度 気を取り直して 釣り座に戻る。
あれれ。ヘラバックが水中に沈んでいる。
あわてて 引き上げるが 中身はびしゃびしゃである。

雨の中 黙々と 餌打ちを繰り返す。
なじみ切ったところで ズン と力強い あたり。
ゴッンとかなりの手応えである。

カツッケ夢弦を満月のように絞る引きである。
この引きこそ 一ツ瀬の引きである。




ぐぐーん ぐぐーん この感触を楽しみに来たのだ。
なんとか 大玉網に乗せ そっと引き上げる。
体高のある重量感あふれるへらだ。

検寸すると43.5センチ ある。 大きな流木や 塵が竿先に止まる。どうしても 釣りづらい。
17.00に納竿する。

帰りに 横尾大橋を通る。
本流の水嵩が相当増えている。
本湖もかなりの増水である。

フジヤに到着。カウンターで食事をしながら 茶畑に入られたふたり連れ釣り人の 話を聞く。

今年はおかしい 餌を追わないとの事。

釣果は1枚のみだったらしい。 3枚でも 型を見れたのだから 良いのでないの と言われる。

この夜 もじりさん カワセミさんから 激励の電話を戴く。

有り難う。 明日は 頑張ります と元気に答える。




6月21日(金)
フジヤを5時前 に出発。 山また山 川また川の一つ瀬は 今日も激しい雨が降り続く。

横尾大橋より見る 米良川本流はさらに 急流となって 本湖に流れ込んでいる。
今日も車は 銀鏡川上流に向かう。

此処のベテランへら師は はなから 銀鏡川を外す。
ムラが多いのである。
安易に流れてしまった。
先日 宮崎へら研の釣り人が入っていた所に入る。 左手奥に流れこみのある 岩盤にかこまれたワンド状の所である。

4時間程 餌打ちするがあたりがない。時々ワンドの中央で大きな鯉がもじる。

場所替えを決意する。

今度は 吊り橋より200メートル上流のゆるやかな勾配の草原台地に入る。 此処に 降りるまでが大変である。 急な崖を 重い釣り具を持って 雨の中を頑張る。

水際迄近づくと バシャと草むらより巨べらが 逃げ出す。しかし その数は少ない。 11尺で一本半で床である。

此処も当たりがない。浮木の横をハタイて 傷ついた巨べらがゆっくりと泳いでいく。 下流より 風に乗って 塵の群が流れてくる。
その下に5ー6匹の巨べらが付いている。目の前を黒い魚影がゆっくりと動いている。おお。時間よ、止まれ。




慌てて餌付けをするが こんな時に限って手間取る。黒い固まりに向かって 斜めに 餌打ちするが それを避けるようにして 巨べら が とおり過ぎていく。

17.00迄 粘るが この日は 一度も当たりがなかった。雨で下着まで濡れる。 車に暖房を入れて 乾かす。

この日 銀鏡川上流に入った釣り人は 私 一人であった。

帰りに 横尾大橋の下を見ると 道路側埋め立て地のヘチ狙いで4人のベテランらしき 釣り人が入っている。

短竿を斜め打ちにして 上流に登るへらを狙っている。

その前を巨へらが 背鰭を見せながら らくだこぶワンドのある 上流に登っている。

ありゃ。この辺は 絶好のポイントじゃないの。

この夜 フジヤは巨べら師で 梁山泊のようである。 なかでも らくだこぶワンドに入った 福岡の夫婦は 二人で100枚、なんと 奥さんが47枚 最長寸は47センチ「 腱鞘炎になるわ」 なんて言っている。

これは 枚数で今年の 一つ瀬の記録らしい。




熊本の高岡さんは 一つ瀬のベテランである。
「今日は横尾大橋の下に入ったが、 上流に登っていく巨べらが 短竿にゴツン ゴツンと当たって行きましたょ。」

明日は カタエ さんも一緒だ。良いポイントに入りたい。

高岡さんに ポイントの案内をお願いする。
「ああ良いですょ」快く引き受けて戴く。 他の釣り人が 言う。
「一つ瀬迄来て 何度も竿を出さずに帰ったことがありますょ」 まあ。当たり外れの多いのが巨べら釣りである。

どやどや と東京から へら専科の取材陣が到着。

へら雑誌でおなじみの 小山さん 門倉さん 熊本の陣内釣具店ご夫妻 スタッフの総勢8名である。
ひょっとすると Joe'sさんもご一緒か、 ときょろきょろ探しましたが 見つかりません。

10時頃 カタエさん 到着。相変わらず にこやかで 元気がよい。
へらぶな随筆の名著 山村 聡の「釣りひとり」をプレゼントし 明日は4時出発を 確認する。

明日は 早いぞ。痛み止めのステロイド剤と眠剤を飲んで寝る。




6月22日(土)
ドンドン 高岡さんが ドアをノックしている。
あっ4時だ。眠剤が効いているので 足下がふらつく。隣の部屋のカタエさんを起こす。急いで車に飛び乗りスタートする。
今日は 久しぶりに 晴れである。

第一候補の土管前ワンドは すでに4−5人の釣り人が 暗いなか懐中電灯を照らし 降りて行きつつある。

ここはもう一杯だ。茶畑え向かう。四日前 凧さんが48.2センチを上げた所だ。

すでに 久留米ナンバーが止まっている。それを挟んで 私とカタエさんの車を止める。
高岡さんは 私は 横尾大橋左岸上流部に入ります。
と言って 引き返えされる。

茶畑の間に 道 が付いている。

薄暗いなか 「こちこち」「ああ私そこに入る」とカタエさん。
水際迄降りると バチャ バチャと草むらから巨べらが飛び出す、
「うわっ はいとる はいとる」 「うひひ。」
此方も巨べらとともに 右往左往する。

暫くすると バチャバチャとカタエさんの所で 大きな水音。
「ああ 逃げた。鯉じゃ」
「それ 鯉ちゃいまっせ 鮒でっせ」
「浮木が良くなじむ所があるょ。」
「それ 穴ちゃいますか 俊作さんがが掘った やつでっせ。
そこをめがけて 打ちなはれ」と話しつつ ツンアタリで40センチクラスが2枚釣る。




カタエさんの所に行く 
「釣れた?」
「ええ3枚」
見ていると ガマとガマとの 間が良く浮木がなじむ。
ツツツーウと浮木が横に行く。
ガツン バシヤ バシャと 手前の倒れた葦の上を滑らせるようにして40上を上げられる。

「うわ むちゃくちゃ」
「アハハ アハッハ」
「ウヒヒッ」
とお互いに奇声が出る。

どうやら カタエさんの入られたところは 茶畑よりの道の延長上にあるらしい。

へらがその道に沿って 登っているようだ。
この日は カタエさんは7枚の釣果で このあたりでは 竿頭である。

横尾大橋の左岸上流に入られた 高岡さんは 46.5センチ 1枚 ここに6人 入ったが 釣れたのは2人のみ 食いが悪いと言って 熊本に帰えってしまった。

休憩していると 軽バンから釣り人が降りてくる。
臭いでわかる。
へら極道である。
この10年毎年 この梅雨時期を狙って10日間ぐらい 一ツ瀬に来ている。
記録は 横尾大橋上流で上げた49.5センチだ。と言う。
「何処から来たの」

「神戸や」

やっぱり 神戸組か。新成羽ダム でも 旭川ダムでも「神戸組」にやられた。
かならず 巨べらを釣る 刺客のような存在であった。




良い ポイント に入ると 車で寝泊まりし 何日も粘り、割合に危険なところにも 平気で入り ナイターを好んだ。

「ひょっとして ハタイたん」湖面を見つめる 男の目が きつかった。
「ああ。ハタイたょ 今日でおわりょ」と突き放す。

「そうか」その小さな呟きの中に 悔しさが込められている。
急に 元気の無くなった へら極道 は車に戻り上流へ消えて行った。
もっと苦しめ! へら極道ょ。あとは お前の 運てやつょ。

この夜 フジヤで 凧さん所属の一水会の会長さんに お会いする。

凧さんが48.2センチを釣られた時 会長さんも 一緒に茶畑で竿を出していたが

「釣台ゃ長靴に 巨べらがゴツン ゴツンと当たるんだが ボーズだったょ」

「そんな中で 釣るんだから 凧さんはやっぱり 上手いんだろうなぁ」

明日は 凧さんも 来られるらしい。




6月23日(日)
今日は 田村真次さん カワセミさんがこの一ツ瀬へ来られる日である。
 ffish のお陰で 山深い一ツ瀬で 楽しいミニOLMが出来るのである。
有り難いことである。

今日もダムは 少しずつ減水が続いている。
今日は 横尾大橋休憩所の下に入る。
ここも実績のある巨べらポイントだ。

椎葉ダムより 此方へ転戦してきた 大阪の釣り人が二人入っている。
椎葉ダムも ハタイていたが 釣果はいまいちだったらしい。

10時頃 あたり が無いので 休憩所に 田村さん カワセミさん カタエさん 私の4人が集まり わいわいがやがや と宴会が始まる。

田村真次さんは パワーあふれる好男子で戦車のような四駆に乗っておられる。

鹿児島から此処までは3時間もかかるのに 来てくれたのだ。

パソコンの事も 詳しい。

楽しい宴会は、13.00頃まで続いたが カワセミさんが ゴロリと横になって 寝てしまう。




暑い日差しの中 もう一度 釣り座に帰り 巨べらへのチャレンジを再開。

ジャミあたりはあるが ヘラのあたりは無い。

JUNさんが ご家族共々 来られる。
お忙しい中 時間を割いて 激励に 来てくれたのだ。

感謝の気持ちで一杯になる。

なんとか 此処で1枚でも 釣りたいと懸命になるが へらは深い所へ移動した ようである。

15.00頃 皆さんが 再開を約束して 帰られる。
一人ぽっちになると 急に淋しくなる。
宴の後の淋しさが 身にしみる。

高槻に帰ろうかーーー。

どうも 一時のお祭りも終わりの時を迎えつつあるようだ。
一人ぼんやりしていると

「朝太郎さん」

「う。」

カワセミさんだ。

「凧さん を探してみましたが 見あたりません。」
目の前を 巨べらが流れていく。
大きな魚体から血が滲んでいる。
釣り人が 殺してしまったのだ。

今日は 沢山のボートが走り回っている。
ここ2−3日 ナイターも盛んのようだ。
こうして釣り人が 自然の生態系を狂わし 地元の人々に迷惑をかけ 貴重な釣り場 を失っていくのだ。




「カワセミさん 釣り人が 一ツ瀬ダム を荒らしてしまうかも知れませんね。」

「以前は こんなに 釣り人が 多くは来られませんでした。」

昨日 茶畑の手入れをされているおばさんに会った。
此方は恐縮しつつ

「こんにちわ」 と声を掛けます。

「よく 釣れましたか」と愛想良く声を掛けてくれます。

 しかし 釣り人は 早朝より 茶畑の中を 走り回っているのだ。

土管前のポイントに入るときは  釣り人は 民家の庭を通っていく 垣の扉を釣り人が勝手に開けて通って行くのだ。

 早朝の4時頃より 車を止め 家の側を通る。

 私が気になったので 「すいません」と声を掛けると

「どうぞ どうぞ」

と笑顔で お爺さんが答えてくれました。

このような 地元の方の 好意も 何時まで続くのだろう。

釣り人は 地元の方に お世話になっているという 謙虚さが必要なようです。




カワセミさんとそれぞれの思いで横尾大橋から一ツ瀬ダムを眺めていると 突然

「何処か 泊まるところは ありませんか」釣り人が現れる。

「佐賀から 思い切って来ました」大学生の息子を連れた親子の二人連れです。
この日の フジヤは 私と 親子連れの3人だけです。
20人ばかり泊まっていた 釣り人は 誰もいません。

ガランとした広間で 3人が焼き肉の鉄板を囲みます。

「少し 来られるのが 遅かったようですょ」

「はあ、一匹でも釣りたいです。道糸は2号 ハリスは1.5号は必要でしょか」

その釣り人は佐賀の北山ダムのこと 大阪で営業マンをしていた時の話し等よく話される息子の方は 一言も 話さない。

「へら釣りと将棋が趣味です」

「じゃあ 将棋をやりますか」

なかなか 強い。
なんとか1勝1敗に持ち込む。

将棋の最中に なんだか 空しさがこみ上げてきた。

何故だろう 明日は 巨べらを釣ろうという 期待感が急速に消えているのに気づく。 そうだ。
明日 帰ろう。丁度1週間立つ。

別に誰が待っているというわけでもないがー。

(完)




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