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「大沼行状記」
                            著者   飄助 
*5月8日木曜日
朝からお仕事に手が付かない。
職場のみんなの言葉は、頭の上をかすめて行く だけで、一向に脳味噌まで到達しない。

40過ぎたおっさんが、ましてや重要 ポストにある管理職が(^^;;) 
こんなんでいいはずはない。

が、しかしじゃ。
 大沼なんだからしょうがない。
 この際、地位も名誉も床 に投げ捨て、足でグチュグチュにひねくり回してやる。
職場を退職 アッいや退出する時間が迫ってきた。
この頃になると、ハイな気分 を通り越し なんか気持ちが悪くなってきた。

午後2時、飛び出すように職場を出る。
走り去る飄助の背に

「おみやげは、い くらでいいよ」

「僕は、毛蟹ね」 

「贅沢は言わないから、サッポロラーメン ね」 

「私は、白い恋人よ」

と声が掛かる。

そんなの買っとるヒマなんかねぇ〜よ  大沼の湖岸にず〜とず〜と張り付く んじゃ〜



名古屋空港には、出発1時間前に着いた。
搭乗手続きを済ませ荷物を預ける と、ホッと肩の力が抜けた。

急に、かぁちゃんに電話をしたくなって、

「頑張 ってくるぞ」 と告げると、

「大きいの釣ってきてぇや」

と激励してくれた。  お小遣いはくれるは、励ましてくれるはで ええかぁちゃんをめっけたもん や。

メイストームのお陰で、飛行機の出発は40分以上遅れた。
雨模様の曇天では 大好きな飛行機からの景観は望めないだろうと少しがっかりした。

雲ばかりの景色を見ている内に、少しウトウトした。

目が覚めると、飛行機は 津軽海峡を飛んでいた薄くなった雲間より、点々と波の白い模様をつけたどす 黒い海が見える。


とうとうやって来た、大沼はすぐそこにあるんだ。


函館上空から眺める、いかにも肥沃そうな真っ黒い畑の土が印象的だった。

いよいよ、森羅万象さんとご対面だ。

はたしてどんな人だろう。

初対面の楽し みは、パソ通ならではのものだ。



森羅万象さんは、想像以上にいい顔立ちの紳士だった。

身長も高い。
あか抜け た都会人という印象だ。

へらにうつつを抜かす釣り人の姿とは思えなかった。
森羅万象さんの好意で、函館市内を見物することとなった。 

口べたで、人見 知りをするウブな飄助だが、抵抗無くうち解けることができ、函館の名所を楽 しく回ることが出来た。

森羅万象さんのシャレた白い家に着くと、さっそくお風呂に入らせてもらっ た。

湯船に浸かっていると、mesを交わす間柄とはいえ、こんな図々しいことをし てていいのかと思えてきた。 

俊作さんならいざしらず、常識人の飄助は恐縮 の固まりとなってしまった。

「あまり恐縮されると、かえってこっちの方が気を使うから、気軽にしてくだ さい。」

という森羅万象さんの言葉に助けられ、風呂上がりの後の夕食を楽し んだ。

夕食には、森羅万象さんお手製の函館グルメ料理が並んだ。 

特に、子持ち槍 イカの煮付けは絶品で、ボキャブラリ−の少ない飄助には、表現できないうま さだった。



今回参加したくても出来なかった、
金欠病や仕事に金縛りにあった可哀想な波 紋メンバーの分まで、

函館の珍味を食べ極楽を味わい、
語り合っているうち に夜はドップリと更けていった。


*5月9日金曜日
成り行きとは言え、ブルジョア ブルートレインで函館入りする俊作さん を迎えるべく、3時半起きで森羅万象さんと函館駅へと向かう。

函館は、岐阜に比べるとほぼ1時間くらい早く太陽が昇る。

これって、みなさん知ってました? あちきは、改めて日本の位置を 頭に描いて納得しました。

さてさて、午前4時25分? 浮子作りビデオ監督・主演の俊作さんが 長靴を履いて駅の階段を降りてきた。

想像していたより体格がガッチリし いかにも「さすらいのダム師」という風貌であった。

体中から、滲み出て くるガッツに少し気圧されぎみとなりながら、力強い握手を交わした。

「さぁ、どこに入ります?」

森羅万象さんの質問に、間髪を入れず

「貯木湾に行きましょう」

と俊作さんが答える。

その返答のタイミングに、屈辱により屈折した大沼への執念を見た。

あの駅で感じたガッツは、あのまさに徹底したやり場のない去年の屈辱 から発していたものだったのだ。



ポイントには、もちろん異存はない。

白樺やナラの灌木帯の中に付けられた、真っ黒い土の未舗装路をちょい と進むと、林道は行き止まりとなった。

マーちゃん(真鮒)やウーちゃんの猛攻を考え、多めに持ってきた餌が ずっしりと肩に食い込み、貯木湾の湖畔に降り立ったときには、自分の年 齢と不摂生な日常を思い知った。


平日であるにも関わらず、大岩左と正面の島では、すでに4〜5人の釣 り人が餌打ちをしていた。幸い大岩右の名ポイントは空いている。

はやる気持ちで、もどかしく道具をセットする。

第1投は6時半? 深緑の水色、点在する島と入り組んだ湖岸、このワン ドに巨べらがいないはずがない。

ましてや、空気の中に微かに魚の臭いさえ感じる。
今にも、入れ食いが 始まりそうな気配だ。

そんな気配のまま、1時間が過ぎ、2時間が過ぎた。

そろそろ、さわりが出てきてもいい頃だ。 

しかし、浮子は動かない。 「三方湖では、10時頃から良くなるんですよね〜」



「野釣りは、これくらいでなきゃ〜」

「そろそろですよ」

と言いながら、餌を打ち続ける。

午後0時? 場所を移動することとなった。

早起きやまさんの電話の話が脳裏をかすめた。

「俊作さんのポイント移動にはまらず、じっと粘るほうがいいよ」

確かにとも思ったが、他のポイント見たさも手伝って、ポイント移動を行った。

数カ所のポイントを見て大沼不調を聞き、少し気落ち気味に池田園の偵察に 出掛けた。

大沼の林はとても明るく、気分を清々しくしてくれる。

厚く積もった枯葉の道  、適当に茂った葉っぱの網の目をくぐり抜けてくる、 春のひかり  ここには、自然のきびしい表情はない。

し〜んと静まりかえった林間に、せわしなく穴掘りを続けるキツツキの「こんこんこん 」という音が響き、のどかな時間が過ぎていった。

どこも不調ということで、一番好調なような「貯木湾」に再びとって返した。



実に、この山を越えるのはこれが今日3回目だ、足のかかとには、豆も出現し 、太股の筋肉はつり気味となった。

「明日、歩けんかったらどうしょう」

午後6時頃、静かに上品に納竿となり大沼の1日は終わった。

  函館の森羅万象邸では、大変な疲れにも関わらず、森羅万象さんは料理の腕を 振るわれた。 ただただ頭が下がった。

前日にも増して、函館珍味をたらふく食べ、大沼の話、へら釣りの話、浮子の話 に夢中となった。



海ます(サクラマス)のフライは、さっぱりとした味なのにマス属のうま味が濃 厚で絶品であった。

本州では、ちょっと食べられまへんで〜 ええやろ〜(^_^)




*5月10日
朝3時起床

前日の睡眠時間が、4時間。 

今日は、3時間で起床 眠い。

でも、あの貯木湾の島が、 尺半上が待っている。
行かねばなるまい。

仕事で釣行できなくなった森羅万象さんに大沼まで、送ってもらう。

ありがとうございます。

今日も大沼は、静かに私達を迎えてくれた。
歩くことにも少し慣れて、 灌木の林をわたる小鳥のさえずりを聞く余裕も出てきた。

いよいよ島へ上陸だ。 

ポイントを前にして、俊作さんは大きじを 打ち、私は小きじを打った。

道具を組みながら、今日の一日を思った。

ここで結果を出さないと、あちきのこれからの1年は、俊作さんの二 の舞となり、何を言われるかわかったもんじゃない。

そんなプレッシャーから、浮きを見つめるのにも、普段の何倍も力が入る。

餌打ちをしばらくした後、缶コーヒーを飲んで力を抜いた。

少し周りを見渡 す余裕が出てきて、ふと俊作さんを見た。



俊作さんの顔は、笑っていなかった。そういえば、釣りを開始してから一言も 話していない。

あの、軽妙な語りで名を馳せている人物とは思えない。

心持ち引きつった頬から、「今日こそ」「今日こそ」と痛いような気が飛び出 している。

餌打ちから1時間余り経った午前7時、バラケのスピードが変化した。

浮きが ス〜と上がり、途中で止まった。

そしてモゾモゾ。
ちょっと待ったが、次の変 化がない。

餌を切り、大きめのグルテンを付けて打ち返した。なじみ際でサワ リがある。 

そして、なじみきる寸前、スパッと2節入った。

「ギュン」 力の入った合わせで、竿が鳴った。

軟調な征興 秀弦15尺は、最初の一のしに強い。

今まで、何匹もの大鯉に 耐えてきた自信の竿だ。

沖目へ向かおうとするへらの強引に耐え、竿が立った。

ここまでくれば、へらを取り込める確率は高い。

しかし、よく引く。

なかなか 魚体が見えない。

右へ左へと走ったへらが、少しづつ抵抗を弱めて浮いてくる。

「でけ〜よ \(^O^)/」 俊作さんに叫ぶ

「ありゃ〜、シッポが痛い痛いや〜」 (;_;)



ガックリ  まっ、しかし検寸だけはしておくか。

俊作良品 検寸台にのっけると、なんと尺半上。 

へら人生で初めて釣った尺半 上がスレ (;_;)  くやぴ〜

今日の地合は、ほぼ1時間おきにやってくるようで、8時頃になると またまた サワリが出始める。 

が、決め手が出ない。

グルテンに手水を多めに付け、ドボドボ気味の大餌を、そっと送り込む。

餌落ち目盛り位までなじみ、一瞬トメが入り、「スパッ」と2節入った。

くう〜 口から声がもれる。

最初のひとのしを、なんとかこらえ、竿を立て始める。
さっきに比べれば引きが 弱い。 

口を割ったへらは、そんなに大きく見えない。

「どうか、40上でありますように」

検寸台にのせたへらは、44.0cmちょうど その頃になって、震えがきだした。

自己記録更新だ。 
言葉が興奮で震え、うま く話せない。

俊作さんは、マ−ちゃんにいじめられている。 

もやもやの後ツンときれいに入 る当たりは、どうやらマーちゃんのものらしい。



「オラは、いつもこんなんや〜  どうせ、どうせオラなんか〜」(T_T)

俊作さんの、ボヤキが何度かはいったあとの、午前10時。

俊作さんの、竿が「ビシッ」と鳴った。 

水面に突き刺さりそうな穂先から、 どうやら大型らしい。

水面下で横腹が、キラッと光った。

「へらや〜」\(^O^)/

検寸の結果、41.3cm。とりあえず、40上を二人とも手中に収めることが出来 た。 

本当に良かった。

とにかく、40上の結果を出せ、2人は余裕が出てきた。

話し声も弾む。

明るい林に囲まれた水辺に、こうして竿が出せる贅沢と明日もここで竿が出せ る幸せを、二人で話した。

その後、腹パンで型のいいへらチャンを、俊作さんが上げる。

検寸42.8cm 俊作さんの自己記録だそうだ。

すこ〜しづつ地合の間隔が大きくなり、午後からは間遠いものとなり、午後3時 頃からは、ウ−くんとマ−くんばかりになってきてしまう。



ここ大沼のウ−くんは、へ−くんに教えてもらったのか、食事作法がへ−くんそ っくりで、もぞもぞの中に黒帯1本くらいの当たりで釣れてくる。

今日は、一時も気を緩められないハードな一日となってきた。

夕暮れとなって風が治まり、濃密な空気がゆっくり流れ出した。

これまでに、37cm,36cm,35cm,30cmと大型をあげられなか った。

1.2号のハリスを、ひとのしでぶちぎっていく魚、玉網まで寄せたでっかいへ らをハリがのびて、ばらしたりと、大沼はなかなか尺半のプレゼントをしてくれ ない。

道具を片づけ終わると、湖面は薄暗くなってきた。

もじりが岸辺に迫って来る。 その数も多い。

「来年は、ナイターもするど〜」
「この島にテント張るぞ〜」

二人は、既に来年の大沼釣行を考えていた。

帰りの車で、森羅万象さんが

「ほんとに、釣れてよかった。」

と胸を撫で下ろされた。
実は、森羅万象さんには、日中仕事をしながら二人の良い釣りを祈っていていた だいたようだ。

  感謝 感謝



森羅万象さんに連れていってもらった「すすきの」という料理屋で、函館の海鮮 をたらふく味わった。

宗八ガレイってしってます?  

本州にはいない、焼き魚にとても良くマッチす るカレイだそうですが、引き締まった身のそれはそれはうまいこと \(^O^)/



*5月11日 (日曜)
今日は、大沼最終日 森羅万象さんも加わって3人で貯木湾に向かう。

めざす島には、何日間も大沼に詰めている室蘭ナンバーの釣り師に入られて いた。


仕方なく、湖岸を行ったり来たりしながらポイントを探してみるが、最終 日を飾るにふさわしいポイントが見つからない。

もじりも昨日に比べて少ない。


今日は、お下品な結果を出すことになっているのだが、なぜか気力が萎えて きた。

結局、俊作さんの隣に釣り座を構えた。

森羅万象さんも、声が届く範囲の対岸 で釣っている。

昨日、一応結果も出せたので、今日はとても気楽だ。釣り始める前に、ゆっく りと大沼を眺めながら、大きじを打った。 

厚い枯葉の絨毯でバランスを崩しそ うになりながらも、明るい林をわたっていく鳥の声や、湖岸に打ち寄せる波の 音を聞きながらの、とても贅沢な大きじだった。

釣りの方は、う〜くんにも、ま〜くんにも見放され、一向に竿は曲がらない。



きのうの、「すすきの」で残ったうま〜い料理をほうばったり、
缶コーヒーを 飲んだり、のんびりタバコを吸って景色を眺めたり、
遠くの女性釣り師をスコー プで覗いたりとなんとものどかな釣りとなってきた。

「まっ、いいか」 

こんな自然の中で3日間も釣りを出来たんだから、 そう思えてきた。

その後、俊作さんが気になっているというポイントに釣り場を変え、森羅万象 さんと並んで竿を出した。

あまり釣り人が入っていないような場所だったが、湾内を見回してみて、悪い 場所ではないように思える。

名ポイント大岩よりも、いいポイントに思えるのだが当たりは無い。

時々、え〜 くん(えび)らしき、もやもやがあるのみだ。

「ビシッ」

森羅万象さんの竿が鳴った。

13尺の穂先がググゥ−と水面に引き込まれる。



とうとう森羅さんに来た。

魚は、あっちゃこっちゃ走り回り、なかなか浮い てこない。 

なんとか浮いてきたとき、白くて長い胴体がキラッと光った。

でけぇ〜 う〜くんだ。 

森羅さんから緊張が解けると、魚も直ぐに水面か ら浮いた。

「アハハハ  でっかいう〜くんですね」(^_^)
「おっ、ま〜くんもかかってますね」

「一荷や ハハハ」(^_^)

「あれ〜、これってイワナやんか〜」 (゚゚;)

へら釣りでイ〜くんがつれるなんて、さすが大沼。

それも40上の大魚 以前、渓流釣りをやっていたとき 
こんなサイズを追っかけ続けて、とうとう 手中に出来なかったものが、なんとグルテンにきてしまった。

  イ−くんを手に、にっこり笑って記念撮影  森羅万象さんが、無垢な少年の ように見えた。

貯木湾を後にしながら、山を下った。

NAOさんが、ここに通い詰める気持ち が、よくわかった。



人工物が何もなく、自動車なんかの音もない。

湾内に点在 する島、深い緑の湖面、巨べらが今にも出てきそうな釣り師の桃源郷だ。

空港で、森羅万象さん、俊作さんといろんな話をした。 

体はへとへとなのに 心だけが躍っている。

もう一度、貯木湾で手がしびれるほど竿を振ってみたい。

来年も、ここにこれる幸せを かぁちゃんください お願い

    おわり

PS:森羅万象さん、本当にありがとうございました。

お仕事などで、こちらにこられるときは是非、ご連絡ください。

そして、いっしょに竿を並べましょう (^_^)




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