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嵐 の 中 綱 湖
                          著者 本多 順一(じゅん坊)
 中綱(ナカツナ)湖という湖は、信州の大町市にあります。
中綱湖を真ん中に南の 木崎(キザキ)湖、北の青木(アオキ)湖の3つの湖を総称して「仁科(ニシナ)3湖」と呼 んでいます。
北アルプスの懐に抱かれ、周辺には茅葺きの民家が点在し、小さ な田んぼが囲んでいる湖。

 天気にさえ恵まれれば、本当に桃源郷のような小さな湖です。
そこに東京在 住のじゅん坊さんが、へらぶな釣りに出かけました。
前半は台風の雨嵐。後半 はスカッと晴れ渡りました。

この釣りが会心の釣行になったのは、釣り場もさ ることながら、素敵なお相手がいたからでした。
信州の小さな湖での2人だけ の釣り。
ご堪能下さい。



 9/16 の深夜、「急行アルプス号」に乗って新宿を出発しました。

この列車は昔か らの馴染みで、北アルプスへの登山で何度も利用しています。

土曜日の深夜の為で しょうか、列車は空いていて1車両に10名程しか乗っていませんでした。

 「中綱湖」最寄りの駅である「JR簗場」に到着したのは AM5:00 過ぎ。
到着した 時はまだ日の出前で、小雨が降っていました。
無人の待合室で日の出と雨が上がるの を待っていました。

しかし、空は明るくなるのに雨の上がる気配はありません。

しかたがないので、キャンプ用のコンロを出してアルファ米のおじやを作り朝食としま た。

本当なら、待合室でこんなことをしちゃいけないんでしょうけどね。(^_^;

 カッパを着て、ヘラ・パラソルを傘代わりにして湖へ向かいました。

中綱橋から見 る湖は雨に煙ってきれいです。

眺めながら釣場を考えていたんですが、結局「春の聖 湖OLM」の時とほぼ同じで駅の向い側になる林の中としました。

前と同じじゃつま らないんで、違う場所にしたかったのですが、木々の枝が雨除けになると思ったんで す。



釣場へと歩いていて驚いたんですが、春に来た時よりもかなり増水しているんです よ。

水面の高さににして 30cm ほどですかね。
その為もあるのか、湖面にいくつか浮 いていた桟橋が全て陸に上げられていました。

増水は嬉しいことなんですが、困った 事に前回入った場所が軒並み水没しちゃっていて釣場が決められないんですよ。

雨の中をウロウロと歩き回り、なんとか釣台を据える場所を見つけました。

木陰で ゴソゴソやりながら30分も掛けて支度も終わりやっとの事で釣り開始。

時計の針は 7:00 を回っていました。

ここで作った仕掛けとエサはこんなもんです。


  ・竿  : 15尺の底釣り

  ・道糸 : 1.5号

  ・ハリス: 0.8号

  ・鈎  : 改良ヤラズ6号

  ・上エサ: 底釣りダンゴ(夏)と新Bを 1:3

  ・下エサ: グルテンα21



張切って始めたのは良いのですが、開始から5分ほどで何故か右足が冷たくなって きて、10分程で今度は左足が冷たくなってきました。

そうなんです、水に浸ってい る長靴に穴が開いていたんですね。
それを無視してエサ打ちを続けていたのですが、 その内にやたらと寒くなってきました。

台風の影響なのでしょうか、雨足はドンドン 強くなって行きますし、長靴には水が溜まっていきます。

開始して1時間、とうとう 我慢しきれなくなり、道具はそのままに岸へと上がりコンロでコーヒーを湧かすこと にしました。

雨に濡れつつ、やっとの事で沸かしたコーヒー飲みながら湖を眺めます。

雨は強い んだけど、空は明るくてなんとなく

「嵐の中のキツネの嫁入り」

って感じです。

何気 なく竿に目を戻すとウキがないんです。

あれ、藻にでも引っ掛かったかなと思い、竿 を上げてみると道糸がグンと引かれます。

そうなんです、藻に掛かったんじゃなくて 魚が掛かっていたんです。

掛かった魚は元気がよくて右へ左へと走ります。

一気に抜 くと糸が切られそうです。

竿をしならせながら両手で持ってとにかく堪えます。



 こうなるとパラソルが邪魔になります。

片手を離すのも恐いので、釣台を蹴飛ばし て倒し、本人は立ち上がりました。

格闘すること数十分(掛かったような気がする) 。

やっとの事で玉網に納めたのは、体高も立派なヘラでした。

陸に上がって計ってみ ると 36.8cm もあるじゃないですか。

嬉しかった。

苦労して上げたかいもあるっても んです。

早速、写真を撮ろうってんでカメラ(使い捨てだけど)を入れたウエスト・ ポーチを探したのですが見当たらない。

嫌な予感がして、さっき蹴飛ばした釣台の方 を見ると、横倒しになった釣台の横に財布とカメラを入れたウエスト・ポーチが沈ん でいるのです。

慌てて引き上げてみても後の祭り。

カメラはビショビショで振ると、 チャポチャポと音がするんですよ。(;_;)

写真撮影は諦め、再度体制を立て直して釣りを続行です。

とはいえ、台風の影響で しょうか、風雨は増々強くなってきます。

時々、突風が吹いてウキが寝ちゃったりす るのですね。

時計を見ると AM10:00 過ぎで、そろそろ止めて宿に行こうかなとメゲて 来た頃、ウキがスッコンと沈みました。



強風で重くなった竿を煽るように合せると、 ズッシリとした手応え。

先の魚程元気はよくないのですが、力はあるようです。
なかなか強い引きが竿を伝わってきます。

今度はパラソルを除けて立ち上がり、竿を絞る と思ったより小さなヘラの顔が水面より出て来ました。

朝から一度も変えていないの で、多少パーマ気味のハリスを気にしながらユックリとヘラを玉網に納めると 28.3cm でした。
このヘラを湖に帰す頃になると雨・風が耐えられない位に強くなってきました。

強風で竿を振る事ができないんですね。

そろそろ限界かなと思い、道具を仕舞って宿へと向かいました。

途中、湖畔にある休憩所で再度コーヒーを沸かしてノンビリしてい ると、リュックに入れておいた無線機(CB無線です)が鳴ります。

出て見ると、後 から車で出発した連れが宿に到着したとの事。

コーヒー・ブレイクもそこそこに僕も 宿へと向かいました。



さて、宿に行ってみると既に連れは落ち着いていて、宿のおやじさんと仲良くオシ ャベリをしていました。

まあ、その慣れ慣れしいことにはこっちが呆れてしまうくら いです。(^_^;

取り敢えず部屋に入り、
宿帳に名前なんか書いたり、

濡れた物を干したりした後に、
夜行で来た疲れなんかが出たんでしょうか、
眠くなってしまいました。

連れの持って来たウィスキーを飲んで仮眠を取ることにしました。
気持ちよく寝ていると連れに「晴れたよ〜」と起こされました。

窓から見上げると 真っ青な空に真っ白な雲が浮かんでいて、見事な「台風一過」です。

そればかりじゃ なく、急に冷たい空気が流れ込んだようで息が白くなるくらい気温が下がっていまし た。

これから釣台等をだすのもメンドイのでバスを狙う事にし、二人してルアー竿を 持って出かけました。



釣人ってのは目ざといもんですね。嵐の中では数人しか居なかったのに、晴れたと なれば20数名のバサーが湖に並んでいるんですから。

もっとも、ヘラ師の姿は見え ませんでした。

この後、二人して数時間竿を振ったのですが、バスは一向にきません。

連れが 25cm 程度を掛けて大騒ぎを演じた位でした。

大騒ぎしたってのはね、掛かった嬉しさに足 元の確認を怠ったために湖にハマッテしまったんですよ。

僕にはな〜んにも来ませんでした。

おっと、九州OLMに参加していた いとうさん には電話が掛かりましたよ。

宿に戻り入浴後に夕食となったのですが、ここでビックリ。

この民宿の当夜の宿泊 者は僕等二人っきりだったのです。

二人だけの為に風呂を沸かして夕食を作ってもら ったなんてなんとなく申し訳ないような気になっちゃいました。



翌日はグーグー寝ている連れを置いて AM5:30 に湖へと向かいました。

前日と打っ て変わっての良い天気です。
雲一つない青空ってやつですね。
しかし、寒いことった らありません。

長野の初秋を甘くみていた僕はろくな防寒具を持って来ていなかった のでなおさら寒さが身に染みます。

この日は前日とは違って、湖の駅側に釣場を決め ました。

「春の聖湖OLM」の時に もじりさん 達が入った所と同じ場所です。

ここ は木などがなくて開けた場所で邪魔になるものがなくて、太陽が高くなれば暖かそう です。

支度は昨日に比べれば簡単です。

だって、全く同じ仕掛け、同じエサだし、なによ りも雨・風がないのですからね。

さて、竿を出して底立ちを取ったのですが、ここは 昨日の林の中よりも幾分浅く、藻が大きくて量も多い。

その藻が邪魔をするんで底が 取り難いんですね。

底立ちゴムを付けた鈎に藻が絡むんで、エサ打ちをする前から3 つも鈎をダメにしちゃいました。

マイッタ、マイッタ。

それでもなんとか底を取って エサ打ちを始めました。



数度目のエサ打ちでウキに反応が出ました。

ジーッと水面を睨みつけている僕の目 の前で、ウキがスーッと真横に動き、ピタッと止まったと思ったらフワフワと沈みま した。

急いで合せると右へ左へと元気良く走ります。
慎重に上げてみると 40cm を越 えるような鯉でした。

まさかここに鯉が居るなんて思っていなかったんで驚きました よ。

この後はアタリもなく、エサ打ちをしてはウキを睨みつける時間が続きます。

そ のうち、寝ていたはずの連れがヒョコヒョコとやって来ます。

なんでも朝食の時間らしい。

確かに 7:30 を過ぎています。

取り敢えず早朝の釣りは終わりとして食事をし に宿へ戻りました。

 朝食も終わり、さっきと同じ場所に釣台を出し、再び開始です。

連れは近くでバス を狙って竿を振っています。

その頃になると平日(月曜日)にも関らず、ルアーやワ ームを振っている人の姿が見え始めました。

相変わらず、ヘラを狙っているのは僕だ けなんですけどね。



竿を出し始めてから暫くするとウキに反応がではじめました。

でも、その反応はジャ ミもようです。

ツンツンするウキの動きに堪え性をなくして合せるとやっぱりジャミ が掛かってきます。

気長にして合せないとエサがつつかれてしまうのでしょうね、あっ という間にエサ落ちしてウキが浮かんでしまいます。

しょうがないんで、バラケを多 くしていた上鈎の寄せ餌のダンゴ(底釣りの夏)の比率を多くして、バラケ性を小さ くしました。

これによりジャミは減ったのですが、今度はアタリが思いっきり少なく なっちゃいなした。

 ある時、上鈎のエサが落ちたんで竿を立てた途端にひったくるようなアタリ。

左右 に走ることはなく、まっすぐに沖へとフッ飛んでいきます。
竿を絞ると、バチャンと 跳ねます。

その魚を見た途端に驚きました。な・な・なんとバスなんです。

ヘラ仕掛 けに来るとは思っていなかったし、周りでルアーを一生懸命に振っている人達にも一 向にアタリがないようなんで、ともかく驚きました。

跳ねる魚の対応は、多摩川で掛 かって来るボラで鍛えていますんで慌てることはありません。

道糸を緩めないように して、24cm 程度のバスを上げました。



 バスを上げると連れが文句をつけはじめました。

そりゃそうですよね、彼女は朝か ら竿を振っているのにちっともヒットしないんですものね。

そんなバサーを尻目にヘ ラ仕掛けに来ちゃうんですから文句も出て当然です。

近くでやっていた別のバサーも じっとこちらを睨んでいました。

 実を言うと、朝食を食べてからここまでヘラは一枚も釣れていなかったんですが、 バスが呼び水になったのでしょうか。

バスを湖に戻した頃からウキに反応が出始め ました。

ユラユラ、ツンツンするんですね。

押さえこみようなアタリやら、消しこむ ようなアタリが時々出るんだけど、どれも不意にくるんで手が動かない。

合せてみて も、自分で解る位に遅いんですね。
これじゃあ掛かるわけはありません。

 連れの手前もあり、内心のアセリを表にだせません。

本当は、「ボケ、カス、バッ カやろ〜」なんて叫びたいんだよね。

でも、そんなことをすれば笑われちゃうのは解 っています。

男の意地としてそんな事はできませんよね。

ここは、顔で笑って心で泣 いてって奴です。
あ〜あ、辛いぜ。(;_;)



このままの状況をつづけてイイはずがありません。
ちょっと休憩し、コーヒーを沸 かして作戦を練ることにしました。

とは、言っても知識不足の知恵不足の頭を総動員 しても、そんなに沢山のアイデアが浮かんで来るはずもありません。

思い付くのは、 今のエサに手を入れるのと、釣りバックをかき回して新しいのを作る位です。

まずは グルテンとダンゴを軟らかめに作り直しました。
次にトロコンを出して来て、「バラ ケさなぎ」と混ぜました。

トロコンは、野釣りには向かないって聴いてましたが、こ うなればヤケです。

釣れなくて元々。
色々とやってみで損はないはずだもんね。

まずは軟らかくしたダンゴとグルテン。

これは正解でした。朝からエサ打ちをして いたんで、すでにへらが集まっていたんでしょうね

(もっとも、僕の他にエサ打ちを している人は居なかったんで当然かもね)。

ヘラ師は新エサでの3投目で明確なアタ リが出ました。

ツンッって感じでウキが消しこみ、相変わらず手首を返すようにして 合せるとググッと掛かりました。
強い引きを楽しみながら魚を玉網に納めると、結構 イイ型です。



こりゃあ尺上かな?と、計って見ると 29.5cm 。

ウ〜ン、惜しい。

この 後もバタバタと続けて3枚釣れて絶好調。(^_^)V



だが、不思議なものです。

4枚目を上げた途端にアタリが無くなったんです。

いっ くらエサ打ちをしても、ウキに反応が出なくなったどころじゃなくて、そよとも動か ない。

偏光メガネをして立ち上がり湖面を覗いてみると、確かにヘラは居ます。つい でにバスも居ます。

それも2匹づつ。

僕のウキの周りをユッタリと泳いでいるのです。

それなのに、ちっともエサに向かってくれない。

見えるくらいなんだから棚が浅いの かもしれないと思い、ウキの位置を調整してみたんだけど、やっぱりダメなんですね。

湖面を覗いたまま腕を組んで考え込んじゃいました。



この頃になると連れが昼食にしようとやって来ました。
時計をみるとたしかに昼を 過ぎています。

色々な事をやったのに、まだ 12:30 だったんです。

宿で作ってもらっ た弁当を食べ、ビールや酒を飲んで空を見上げると奇麗な青空が広がっています。
白い雲がプカーリ、プカーリと浮かんでいます。

台風が行き過ぎた長野の空は秋の色で空気には冬の始めの秋の香りが漂っています。

 午後は選手交代して連れが釣台に座ります。

僕は13尺を担いでちょっと離れた場 所で竿を出しました。

お酒でポーッとした頭には冷たい風が気持ちイイ。

「もう釣れ なくてもいいやな」なんて思い出した頃。

連れがキャーキャー騒いでいます。

どうや ら釣れたらしい。



玉網を持って走っていくと、体高もある立派なヘラが既に釣台の側 まで来ています。

ビギナーズ・ラックとは恐ろしいもんです。

急いですくい上げてサ イズを計ってみると 34cm もあるのです。

尺上を上げた彼女はもう鼻高々です。
自慢タラタラで、如何に今のヘラが強い引き をしたかを話します。

悔しのですが、黙って聴くしかありません。

長野まで付き合っ てもらった義理もあるしね。

(;_;)

 あまりにも悔しかったんで、その直後からは再度僕が釣台に座ったんですけで、ち っともアタリが来ない。

エサをトロコンに変えて、バラケを多くして魚を寄せようと したんだけど、ちっともアタリがない。

顔で笑って背中では脂汗を流しながら頑張っ たんだけど、ちっともウキに反応が出ないんです。

結局はお終いにした PM4:00 まで 釣れないどころかアタリさへない状況が続いたんです。

な〜んにも釣れなかったんだ よね。

(;_;)



 僕に釣台を採られた連れは再びバサーと化し、僕が脂汗を流してる間にバスを3匹 も上げていました。

(あ〜、僕の立場がない)  翌日は連れの車に乗って長野観光を行ったんで、釣りはこれでお終いです。

ついで に釣行記もここらでお終いにします。

                  じゅん坊




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