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ウキウキ釣り天国−夢幻の檜原湖
                             著者 島尾俊二(俊作)
☆シュークリームまみれの人生
「朝ですよぉ!」

きくひろさんがキムタク系の爽やかな笑顔で起こしに来た。
キムチ&タクアン系ではない。ホンモノのキムタク系だ。
『ウッ』っと、泥の中からはい上がるように時計を見ると7時。

『ガ〜ン!』

隣のベッドではトトロが、ぢゃなくて(^^;; がぶちゃんが死んでいた。

昨夜、待ち合わせの磐越道磐梯山SAには23時すぎに着いた。

レガシーツーリングワゴンの後部座席を倒してマットを敷き、シェラフを被っ て寝ようとしたのだが、駐車している大型トラックのアイドリング音が耳につ いて、まったく寝れなかった。

3時に行動を開始して、やたらクソ暑い会津で一日中神経プッツンするへら釣 りをし、夜は夜で、超豪華リゾートホテルで夜中まで酒やシュークリームを鱈 腹飲み食いしたのだから、起きれる道理が無い。




酒が強くないボクはそんなに飲まなかったが、それでも軽く頭痛がした。

最悪である。(-_-;)

リビングに行くと、P.HULLさんが床に転がって死んでいた。(^^;;

隣の和室では、いとうさんとしんさんがお行儀良く布団の中で死んでいた。(^_^)

1升ビンが2本、ビールの缶が無数、ブランデーが1本、死んでいる。(゚゚;)

お湯を沸かしコーヒーを入れ、しんさんのお土産のジャンボシュークリームに 顔を埋める。

なんというシ・ア・ワ・セ。V(^^)v

指についた生クリームを最後にペロペロする。


ペロペロしていると、ふと40カミが胸ビレを振りながら「バイバ〜イ!」って 言ったような気がした。

ま、ボクの人生とはこんなモンか。




☆混成部隊
カップラーメンを鱈腹食って、超豪華リゾートホテルを後にする。

昨夜、本館のプールサイドで会った切れるようなワンピースに、黒髪から水を 滴らせたオネイサン、キレイだったなぁ!

月ちゃんもじぇったい!あんな美女に違いない。なんでかんでである。
そ、そうだ!来年のOLMには月ちゃんも参加させてあげよう。

もちろん、切れるような水着持参でだ!なんでかんでである。((((^^;;

宮城ナンバーの車を先頭に、いわき、足立、川崎と、バラバラのナンバー、バ ラバラのスタイルのクルマが、すっかりお天道様が高くなった緑の高原の道を 疾走する。

裏磐梯の中心街を過ぎ、県道から遊歩道の入り口に入った時、「ギョッ!」 っとした。

クルマ、クルマ、クルマである。それも、やたらめったステッカー を貼りまくったディーゼル4駆のRVが多い。
中には、遊歩道の入り口を塞ぐ ような格好で堂々と駐車しているクルマもある。

「な、なんぢゃこりゃぁ!」

今まで5年間ここに来ているが、夏のお盆シーズンでさえこんなにクルマが溢 れていたことはなかった。
この遊歩道を通って3カ所ほどのバンガローに行けるから、きっとそれらに行 ってる客のクルマに違いない、と思うことにした。
それにしても、もう少し考えて駐車すればあと2〜3台は駐車できるのにと、 アタマに来る。




仕方なく、やや離れた県道の駐車スペースに行ったが、ここでも同じ事。
道路に直角にクルマを停めれば10台以上は楽に止められるのに、横に停めて あるクルマが多く半分も停められない。ほんとうにハラが立つ。

どうにかこうにかクルマを停め、荷物を背負って遊歩道まで戻る。
さあ、いよいよだ!
ボクの大好きなとっておきのカーティスクリーク、檜原湖のイカリワンドに行 軍開始!!

本道からイカリに向かう小道に入る。山あり谷ありの20分ほどの行程である。
小道は夏草に覆われ、所々に昨冬の大雪の仕業であろうか、倒木が行く手を遮 っていた。

いつも6月の半ば頃になると、バンガローのオヤジが7月からの営業に向けて 小道の草刈りや電線&電話線の手入れをし始めているのだが、今年は全くその 気配がない。

それにしても、この高原の山道を歩くデコボコ6人組には笑ってしまう。

ゴツいゴム長を履き、釣り台を背負い子代わりにして荷物を背負う男、 両手両肩でこぼれんばかりの膨大な荷物を運ぶ男、
フライロッドとフライベストでビシっと決めながらも、ホームセンターで売っ てるような黄色いゴム長を履いている男、
スピニングロッド片手に蛍光赤のタックルベストを着、オレンジのサンダル履 きでふらふら歩く男、




唯一、正調へら師スタイルで決めた二日酔い男。(^^;;

この6人6色の釣りのスタイルにどういう脈絡があるのだろうか?
一応、へら釣りの波紋会議室のOLMのはずなのだが・・・・・・。
う〜みゅ。釣り台を背負って先頭を歩くボクにも謎である。

背負い子男 − 波紋の俊作さん

膨大荷物男 − 波紋のがぶちゃん&きくひろさん

フライ 男  − きゃすとのしんさん

サンダル男 − なぶらの鈴宮小夜さん

正調へら師男− 波紋のいとうさん
う〜ん!




☆な、なんなんぢゃー!?
足場の悪いいくつもの急な登りと下り。
ボクはなるべく後ろを振り返らないように努めていた。
背中に怨念がビシビシと突き刺さる。

斜面の途中の道が崩れかかっている。息も絶え絶えにヨタヨタ歩く二日酔い オッサンキャラバン隊員に不安がよぎる。
誰かが転がり落っこっても知らん顔してよ。
ミイラとりがミイラでは美談にも ならない。

いつしか完全に無口になって黙々と歩ってるオッサン達を励ますため、
「もうすぐですよぉ〜〜〜!」

を3回繰り返したところでやっと樹林の間から湖面が見えてきた。(^_^;)ホッー!

「着きましたよぉ〜〜〜!!」

と言っても、全く反応が返って来ない。ドチタノカナー?ミンナ(^^;;
しばらく歩くとイカリワンドの全貌が見てきた。

「な、なんぢゃぁー?!?!?!」

人、人、人!である。
色とりどりの服をきた人、人、人!が岸辺にた〜くさん立っている!

「????????」

近づくにつれ、それらの人がブラックバスを狙う釣り人の群であるというのが わかった。




『ガ、ガ〜ン!これはどうした事だ?!なんでこんなにバサーがいるんだ?』
この現実がボクには理解できずに茫然と立ちすくんだ。
檜原湖の、このイカリワンドに通って5年。

去年までの4年間、夏のバンガローシーズン以外ここで出会った人間は、地元 のコイ釣りのジイサマと五目釣りのオッサンと裏磐梯小学校に通うミミズでバ スを釣る少年達と春の乗っ込みにやってくる巨べら狙いのへら師だけである。

否、人間と出会わない時の方が多かった。

文明が作り出す物音ひとつ聞こえない静寂なワンドで黙々と竿を振っていると、 時として、人類が消え去った地球に一人ポツンと居る錯覚さえして、怖い時す らあった。

4年前に初めて来たときバスなんて居なかった。
その証拠にエサを打つと水面 をさざ波立ててジャミがエサに群がった。
コイ、マブナ、ハヤ、オイカワ、ニゴイ。
とにかくなんでも釣れた。
水中にこぼれたエサには川エビやメダカが群がっていた。

3年前、会津にいる兄貴が桧原湖でもバスが釣れるんだってよぉ!と言ったけ ど、バスの姿は見えなかった。
でもジャミがおとなしくなったような気はした。

2年前、へらの大乗っ込みに出会って仰天した。
そしてバスを初めて目撃した。
釣りをしていると、すぐ目の前までやってきてジーッとこっちを見ていた。
不気味なやっちゃ!と思った。




去年、そこらじゅうにバスがウヨウヨいた。ウヨウヨだ!
そこかしこにバスが産卵床を作ってジッとしていた。デカイのがいた。

50cm 近くはあったろう。
それでも、バサーなんかには1回も会わなかった。

ジャミは全くいなくなった。

ウキが全く動かない代わりに、「アタればへら鮒」 という、典型的なバスが入った止水の症状になった。

水中の生態系は破滅的に変化したが、ここを訪れる人間には変化は無かった。

そう、少なくとも去年までは・・・・。

それがどうだ!バサー、バサー、バサーである。

5〜6m間隔にバサーが並び
「シュッ、ポチャン!」「シュッ、ポチャン!」「シュッ、ポチャン!」 である。
ここは河口湖か?!

けたたましい船外機の音を派手にたてて、ボートがこっちにやってくる。

「うっるせーなぁー!」

と、見ていると、な、なんと!引き舟に沢山のバサーを乗せている。

島の向こうでバサーを降ろし迎えに来る時間を告げ、またけたたましいエンジ ン音をたてて水を蹴散らして帰って行く。

その繰り返しでバサーがどんどん運び込まれて来る。

「なんなんぢゃー!?これは!!!」




☆こっちへ来るなー!
バサー天国になってしまったボクの40上ポイントであるが、 昨夜Joe's(ジョー)さんに

「明日の檜原湖が終わるまでは、大沼での37,5cmは巨べら比べに登録しない  のだぁ!グフフフフ!」

と、宣言した手前、なんとしても37,5cmを越えるへらを釣りたかった。

結果が絶望的なのはわかっていた。

静かにウキを見つめるボクの近くに、入れ替わり立ち替わりバサーが来る。

「シュッ、ポチャン!」「シュッ、ポチャン!」「シュッ、ポチャン!」

対岸ではカップルバサーが黄色い声を上げている。う、うらやましい。

昼近く、地元の船外機付きの漁船が島のこちらのワンドに入ってきた。
繰船しているのは30くらいのアンチャンである。

一度桟橋の方へ行き、方向転換して真っ直ぐボクの方へやって来る。

「ン?」

だんだん近寄って来る。エンジン音を響かせて真っ直ぐやって来る。

「??????????」

アンチャンは軽く微笑んで全然方向を変える素振りを見せない。ボクのウキは もう目の前である。

「なにやってんだよぉ!釣りしてんだぞぉ!ウキが見えねーのか、テメー!!  こっちに来んぢゃねぇーー!!」




ボクはプッツンした。

足元の石をつかんで投げてやろうかと思ったけど、突っ 込んで来られるとヤバイのでヤメた。(^^;;

アンチャンはあわててエンジンを切ったが、船は惰性でボクのウキの真横を通り 右手の岸辺にゴン!とぶつかって止まった。

アンチャンは、入漁料徴収のオッサンを乗せてきていたのだ。

しばらくすると後ろのヤブをガサガサさせて腕に漁協の腕章を付けたオッサン が「入漁券見せて下さい。」とやって来た。

ボクは1000円と引き替えに、遊漁者に対する漁協の立場と接し方を極めて 紳士的にレクチャーしてあげた(^^;;

船に乗って帰る2人はブツブツと

「今度はちゃんと“漁協”って舟にも書いてくんべぇ!」

とかなんとか言いながら、向かい風の中をあのデカイ漁船にしては貧弱なオー ルでバチャバチャ漕ぎながら沖に出て行った。
で、沖でエンジンを掛けるのに手間取り、風に流されてまたボクのウキの方へ 寄ってきた。

「コラァー!!ふざけてっとホントに石ぶっつけっつぉー!」

5年の間、ここでへら釣りしていて漁協から金を取られたのはこれが初めてだ。
ポリシーもモラルもアイデンティもビジョンも何も無く、金集めにやっきにな ってる漁協が管轄する湖に、未来はない。




☆ランチタイム
イヤになってやめようかと思ったが、30m先のみんなに止める気配がない。
なんのことはない。
向こうはとっくにイヤになって、手釣りでスモールマウス バス釣りに興じていたのだ。(^^;;

昼過ぎ、ボク以外のみんなは一足先に帰って行った。
あれだけ居たバサーも何処かへ行ってしまい、急にワンドは静けさを取り戻した。

昔の檜原湖の雰囲気だ。
聞こえるのは、風の音とカッコウの声と木々のざわめきの音だけ。

気を取り直して、エサを新たに作り替えた。
打ち込んだエサが波間に沈み、ウキがゆっくり馴染んで行く。
ボッーとそれを見つめながら、お昼ごはんのおにぎりをほうばる。

と、その時、ウキがツン!と2節ほど動いた。

「アリャ!」

おにぎりを放り投げ、あわてて竿を上げたが時すでに遅し。

『へらが居たっ!』

エサを丸めるのももどかしく、次の一投を放つ。

『行くなよぉ!そこに居ろよぉ!!』

ウキがゆっくりゆっくり馴染んでゆく。ドキドキ・・・

「ツン!」

「ビシュ!」

「ギューン!・・・ゴクゴク・・・」




檜原湖のへらはボクを見捨てなかった。

や、やったぁー!
ウンと透きとおった檜原湖の水の中を、ボクの大好きな檜原湖のへらちゃんが ボクと遊んで(^^;;くれている。
33cmの背中が真っ黒い、美しい銀色のへらだった。

次の一投でまたへらがきた。が、途中でバレた (;_;)
次の一投からへらの気配が消えた。
と、同時にまたバサーが戻って来た。
ランチタイムは終わった。へらもバサーも。
ボクだけが幸せな気分で食べかけのおにぎりをほうばった。

著者
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☆へら師は何処へ行く?
4時を過ぎると、引き潮のようにバサーが減っていった。

『もっと居なくなれ!もっと静かになれ!』

「シュッ!ポチャン!!」も、「ドタ!ドタ!」もしなくなれ!!

5時半になると、ワンドは昔のようにボクだけのものになった。
静かだ。やっと二人っきりになれた。ボクの恋人、檜原湖と。

ボクは湖に手を入れ、ワンドをゆっくりと見渡した。
岬キャンプ場のお世辞にもキレイとは言えないバンガロー。

ここに泊まりこんで40cmのへら鮒を釣ったっけ。

初めてここに義妹一家と キャンプに来たとき、あの島を貸し切りでテントを張ったっけ。

オヤジがデッ カイ西瓜を差し入れてくれたり、荷物運びのついでに船に乗せてもらって船着 きまで煙草を買いに行ったっけ。

湖から見る裏磐梯は迫力あったなぁ。

シゲオ支部長と来た時のタヌキにはビックリしたっけ。
5人でカッパギやって オレの一人勝ちで4千円儲けたっけ。

4年に渡る色々な事を想い出した。

薄暗くなった樹林の小道を歩いて長峰船着きまで戻ってくると、あの漁協の アンチャンが居た。

「さっきは悪かったネ!」

と、声を掛け、しばらく話し込んだ。
今年の5月からこの長峰船着きを拠点に、バスボートのレンタルやバサーの ポイントへの送迎を始めたこと。




多くのバス雑誌で檜原湖が紹介され、5月の開業とともに多くのバサーで賑わ い、漁協にとっては冬場だけのワカサギ釣り以上の入漁料収入が期待されてい ること。

檜原湖の2大バススポットがイカリワンドと清水沢ワンドで、共にへらのハタ キ場であること。 へらのハタキ場イコール、バスの付き場となること。
何故なら、浅場で孵化す るへらの稚魚がバスの稚魚の格好のエサとなること。

イカリワンドの島のあたりにバスプロショップ&レストランみたいなのを計画 していること。

喜々として様々な事を話すアンチャンの話を遠くに聞きながら、さっき心に刻 んできたイカリワンドの風景をまぶたに浮かべていた。

そよぐ風、ざわめく緑の木々、カッコウの響きわたる声、ワンドに浮かぶ小さ な島、ボロッちいバンガロー。そして、朝もやの水面で戯れるへら鮒。

「ここは終わったな。」

もう当分来ないだろう。そのバスプロショップとやらが朽ち果てて夏草に埋もれ るまでは。

さようなら檜原湖。たくさんの思い出をありがとう。

さてと、帰るとするか。またあの都会の喧噪へ。







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