CHAPTER-06

午前の実技

ABSブレーキング(その1)

 日本仕様のBMW車には必ず装備されているABSの利点を生かしたブレーキング実技です。

 ここでの実技は、自動車学校で習ったブレーキング手法とは、およそかけ離れたものでした。そして、これはABSがいかにライダーの欠点を補い、ブレーキング時の車体の安定に寄与しているかを体験(体感?)させてくれました。
この味をしめたら、もうBMW以外の車には怖くて乗れなくなります。というのは言い過ぎでしょうか・・・・。

 自動車学校の教習では、エンジンブレーキを併用しながら、前7:後3の割合でブレーキをかけるように教えられたと思います。(もうずいぶん昔の事で、記憶が違っているかも知れません。ひょっとすると、現在の教習ではそのように教えていないかもしれません。)
 しかし、ABS付きBMWの急制動は全く異なりました。クラッチを切りリヤブレーキを目一杯踏みつけるのです。もちろんABSが作動しますので全くロックしません

以下に、行った課題を示します。

速度
km/h
制動課題 結果や感想
40  リヤ
のみ
40km/hとはいえ、フロントブレーキを全くかけない制動という未知の体験に、かかなり怖い思いをしました。このため、クラッチを切る事を忘れてエンジンブレーキもかけてしまい、完全にうまくいったとはいえませんでした。
やってみると、頭に描くイメージでは、リヤブレーキがロックし、タイヤが白煙を上げながら車体が尻を振っているのですが、実際には白煙どころか「鳴き」も全くなく、尻振りも皆無で、あっけなく止まりました。当然、制動距離はフロントのみの場合よりも相当長くなりましたが。
40  フロント
のみ
上と同じく、リヤを全く使わずにフロントブレーキレバーを目一杯握ることは、非常に怖いものがあります。
私の場合、LeMansIII時代に飛び出し自転車を回避しようとして、急ブレーキ → フロントホイールロック → 足元をすくわれるようにして転倒、という経験があり、その記憶がしっかりと脳裏に焼き付います。
この実技では、メーターを見ながら40km/hまで加速し、制動開始位置まで来たら力一杯レバーを握ります。
開始位置でフルブレーキングを始めた瞬間、顔に力が入り、歯を食いしばっているのが分かりました。
実際やってみると、バイクの方は、例によって事もなげに、意外なほどあっさりと止まってくれました。これなら、ブレーキング時にかなり心に余裕が出ます。いいぞBMW!
40 フロント
+
リヤ
ここでは、「制動時にクラッチを切り、リヤは目一杯踏んだら忘れ、フロントブレーキの操作に集中する。」ように指導されました。
普段行っている、前・後両方のブレーキングなのと(ただしリヤブレーキへの入力量は異なる)、ABSの使い方(というか作動の仕方)に少し慣れたので、比較的安心してブレーキングをする事ができました。
実際の制動距離は、フロントのみの場合と比べて 1m 弱しか違いが出ず、いかにフロントブレーキが重要であるかがよく分かりました。しかし、この1m弱という距離が明暗を分けることもあるということなので、みなさん、リヤブレーキもしっかりかけましょう。特にBMWはABS付きなので有利ですね。
80 フロント
+
リヤ
速度が上がっても、「制動時にクラッチを切り、リヤは目一杯踏んだら忘れ、フロントブレーキの操作に集中する。」は全く同じです。
ただ私の場合、速度を80km/hまで上げるためにスピードメーターを見過ぎたため、ブレーキ開始位置を見失い、めちゃくちゃな制動距離になりました。(制動時、車体はすごく安定していましたが)
80 二人乗り
+
フロント
+
リヤ
受講者同士でペアをつくり、それぞれのオートバイで、二人乗り急制動をやりました。ブレーキのかけ方は全く同じです。
その速度が 80km/h というのがすごい!二人乗りなのですから。受講者をそこまで信用していいのかなあ。まあ、過去の事例を十分調査した上のことでしょうから、大丈夫なのでしょう。
結論からいえば、制動はうまくいきましたが、同乗者が慣性の法則で私の体を前に押し出し、(正確にはタンクの上に押し上げ)、立ちゴケ寸前までいきました。インストラクターが支えてくれなかったら、間違いなく倒れていました。転倒に耐えようと、必死で短い足をのばして車体+二人分の重量を支えたので、左足ふくらはぎを痛めました。
同乗者は、片手でグラブバーをつかんで自分の体を支え、前のめりにならないようにすべきなのですが(実際、インストラクターはそのように指導しました)、同乗者がまだオートバイに乗り慣れていらっしゃらなかったので、十分自分の体重を支えきれず、上述の事態をまねいたという訳です。
教訓として、初めての同乗者に対しては、くどい程「前のめり」対策を言い聞かせておく事が大切だと分かりました。また、後で山田純氏に聞いてみると、「足をつく前にお尻をずらしちゃうといいんですよ。」とのことでした。しかし、この「技」を試してみましたが、うまくいきません。何かコツがあるんだろうと思いますが・・・・。

そして、いよいよ午前のクライマックスへ・・・・・・・・

BMWトップへ 次へ